日本時間6月6日(金)、インディアナ・ペイサーズとオクラホマシティ・サンダーによるNBAファイナル2025が開幕する。 ウェスタン・カンファレンスを勝ち抜いたサンダーはシアトル・スーパーソニックス時代の1979年以来46年ぶりのチャンピオンを、イースタン・カンファレンスを勝ち抜いたペイサーズは1976年のNBA加入以降では初の栄冠を狙っている(ABA時代には3度優勝)。
リーグ最高勝率でレギュラーシーズンを終えたサンダーを牽引するのは、シーズンMVPと得点王をダブル受賞したシェイ・ギルジャス・アレクサンダー(以下SGA)だ。SGAの魅力はなんといっても得点力に他ならない。今季1試合平均32.7点、リーグ最多4度の50点超えを記録するなど、エースとしてチームを導いてきた。 最大の武器が切れ味鋭いドライブで、レギュラーシーズンではリーグトップの1試合平均20.6回を仕掛け、そこから15.5点を獲得している。さらに相手の脅威になっているのが、ファウルをもらう技術の高さ。ドライブから獲得したフリースローは1試合平均3.9本、試合全体を通じては8.8本とリーグ3番目の数字を残している。成功率も89.8%と9割近い精度を誇るため、相手からするとハードなディフェンスをファウルに気をつけながら行うという難しい仕事が要求される。 プレイオフにおいても16試合中11試合で30点超え、ウェスト決勝では平均31.4点と抜群の安定感を見せ、4勝1敗でミネソタ・ティンバーウルブズを下し、同シリーズのMVPにも輝いた。カンファレンス決勝MVPは2022年に創設されたばかりだが、もしファイナルMVPを含めた3冠獲得となれば史上初の快挙となる。
ウェスト決勝では従兄弟であるニキール・アレクサンダー・ウォーカーとも激闘を繰り広げたSGA
対するペイサーズのエースとなるのは、タイリース・ハリバートンだ。今季は平均18.6点に加え、リーグ3位の9.2アシストをマーク。オールNBA3rdチームにも選出されるなど、リーグ屈指の司令塔としてチームを牽引。しかし、今年4月にスポーツ専門メディア「The Athletic」で発表された現役選手投票企画のなかで、「最も過大評価されている選手」に選ばれる不名誉な出来事も。ただ、これに発奮したのか、プレイオフで見せた活躍は神がかり的だった。 1回戦で対戦したミルウォーキー・バックスとの第5戦では、オーバータイム(以下、OT)に持ち込む同点ダンクを決め、そのOTでも残り1秒で逆転の決勝シュートに成功。続くイースト準決勝、クリーブランド・キャバリアーズとの第2戦では、第4クォーター残り12秒、2点ビハインドの場面でフリースロー2本目をわざと外し、自らオフェンスリバウンドを獲得。その後、逆転の決勝3ポイントを沈めてみせた。 さらにニューヨーク・ニックスとのイースト決勝第1戦でも、OTに持ち込む起死回生の同点ショットを決めるなど、全てのシリーズでインパクト大のプレイを披露。今季は試合残り2分を切った場面での逆転、または同点ショットを12本中11本成功(その内プレイオフでは4本全て成功)しており、その勝負強さでペイサーズを25年ぶりのファイナルへと導き、屈辱的な評価を一蹴してみせた。
ハリバートンはイースト決勝第4戦で、プレイオフ史上初となるターンオーバーなしで30点、15アシスト、10リバウンドを記録
両チームがファイナルまで勝ち上がってきた要因は、エースの存在だけではない。サンダーの強さの根源は、リーグ屈指のディフェンス力にある。 ジェイレン・ウィリアムズ、チェット・ホルムグレン、ルーゲンツ・ドート、アレックス・カルーソ、ケイソン・ウォレスなど守備でインパクトを残せる選手を多く揃え、プレイオフでのディフェンシブレーティング(100ポゼッションあたりの失点)はリーグ最少の104.7。さらに平均スティール1位(10.8)、ファストブレイクでの失点1位(9.3)、ターンオーバーからの失点2位(12.6)とチーム全体のディフェンス意識の高さが目を引く。ターンオーバーからの得点は2位に平均5点以上も差をつけており、ハードなディフェンスからボールを奪い得点する展開が増えれば、流れは一気にサンダーに傾くだろう。
カレッジチームのような強い結束力もサンダーの魅力
ペイサーズは“ハイパーオフェンス”とも称される、速い展開でのオフェンスを機能させたい。プレイオフでのオフェンシブレーティング(100ポゼッションあたりの得点)はサンダーを上回る117.7点、中でもトランジションからの平均得点は最多の25.8点、アシストも最多の28.1本をマーク。リバウンドまたは失点直後、相手ディフェンスが陣形を整える前にボールを飛ばし得点につなげる場面が散見される。 その中核を担うのが、2019年にトロント・ラプターズで優勝を経験しているパスカル・シアカムだ。シアカムはプレイオフで、トランジションからリーグ最多の102点をマーク。常に先頭を走る走力と無尽蔵のスタミナで、イースト決勝ではチーム最多の平均24.8点を挙げ同シリーズのMVPに輝いた。
初優勝時は25歳だったシアカム。31歳となり、今度はベテランとしてチームを頂点に導けるか
『ESPN』の分析結果によると優勝確率はサンダーの75%と、下馬評では圧倒的にサンダーが優勢。しかし、イースト第4位シードから、数々のミラクルを起こしてきたペイサーズだけに、この前評判を覆す期待感は非常に大きいものがある。 サンダーがホームでの初戦を勝ち切ることができるか、ペイサーズがイースト準決勝、イースト決勝に続きアウェイでの初戦で勝利をもぎ取るか。ファイナルの流れを作る重要な第1戦から目が離せない。